9(2)冷蔵庫がなかったころ、肉や野菜などの貯蔵はどうしていたのでしょうか

実は、身近にあった海水が貯蔵の役割をしていたそうです。まさに天然の塩漬け。この塩漬け主役のは江戸時代でも大活躍します。いや、なくてはならぬ存在でした。司馬遼太郎の小説、菜の花の沖ではわかりやすい描写があります。

淡路島を出発した樽回船は、兵庫県の赤穂で塩を買い付け、北海道でニシンや昆布を塩漬けにし、江戸まで輸送。お金と着物など別の品に換えて、戻ったとあります。

なぜ赤穂市だったか。それはどの地域の塩よりも良質で成分も一定だったため、品質保持に有効で、結果、魚が高値で売れたとされています。忠臣蔵の発端となった殿中でござる(当社設立日の3月14日)は、赤穂の塩が要因であることが知られています。

 

これだけ良い漬物が食べられなくなってきたのはなぜでしょうか?

実は、外食産業の発展の流れで、漬け物から口当たりの良いサラダに置き換わったからだと言われています。

 

塩分での過剰摂取が指摘され、低塩化技術や酢漬けなど進化してきた漬け物。
改めて漬け物の特徴を見ていきましょう。

 

生より栄養がある漬け物

生野菜の多くはアクがあり、そのままでは固く食べにくい。加熱は栄養の損失が考えられる。
生野菜の風味や栄養をあまり損なわずに、食べにくいアクも抜け、しかも自己分解、発酵、調味などによって生よりもさらに美味しく食べられる。これが漬け物である。

生野菜は体に良いのですが、漬け物はさらに良いのです。一方で肝心の漬け物にも課題があります。極度の浅漬けなどで、浸かっておらず腐る漬け物がある始末。樽で計り売りしていたころと違い、密封パッケージに詰める際の殺菌処理などで、自身の発酵でパッケージがパンパンに膨らむ商品は見なくなりました。

 

漬け物の特徴

  • 生野菜のアクや生臭みは自己の酵素などによって化学分解されて食べやすくなる。(風味がでる)
  • サラダと漬け物の違いは、サラダは生野菜をそのまま、または細切りにして、自己分解しない、生きている細胞をそのまま食する。一方の漬け物は塩ごろしにより細胞が死滅し呼吸作用を失い、自己分解により風味が出たもの。食塩は不都合な腐敗菌発生を防止して有用な酵母や乳酸菌を繁殖させる働きがある。
  • 糠床(ぬかどこ)の表面に出る産膜性の白カビはカビ臭を出して風味を害する。
  • たくあんや糠味味噌漬けはつけ込み中に糠の中に有用な微生物が繁殖し、糠のでんぷんやタンパク質を分解して糖分、乳酸、アルコール、エステル、アミノ酸などを精製し、風味が醸成される発酵による漬け物である。

 

漬け物は、栄養吸収効率がいいことと、熱を与えないのでビタミンを失わず、発酵菌が体に良い、まさにビタミンの王様なのです。現在、発酵食品や塩麹(しおこうじ)が注目を集めることは、自然の流れなのかもしれません。

 

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